この記事では、展開と乗法公式について書いています。
大部分は中学数学と重複する内容ですので、高校生の皆様は適宜読み飛ばして進めてください。
展開
展開の基本は次に示す2つです。
単項式\(\,\times\,\)多項式
\(a\left(b+c\right)=ab+ac\)
これは、中1・中2で学習した分配法則を利用してカッコを開いているだけですが、この操作は今後「展開」と呼ばれます。
展開とは、積を和に変形することです。
見ての通り、「単項式\(\,\times\,\)多項式」という積の形が「単項式\(\,+\,\)単項式」という和の形に変えられました。
多項式\(\,\times\,\)多項式
\(\left(a+b\right)\left(c+d\right)=ac+ad+bc+bd\)
念のため、これが成り立つ理由を説明します。
ただし、その前提として1つ目の「単項式\(\,\times\,\)多項式」の展開は認めることにします。
\(a+b=A\,\)とすると...
\(\left(a+b\right)\left(c+d\right)\\
=A\left(c+d\right)\\
=Ac+Ad\\
=\left(a+b\right)c+\left(a+b\right)d\\
=ac+bc+ad+bd\\
=ac+ad+bc+bd\)
\(a+b\,\)を\(\,A\,\)に置き換え、分配法則を2度使用して展開しました。
ここでも多項式同士の積が複数の単項式の和に変形されたことが確認できると思います。
繰り返しますが、展開とは、積を和に変形することです。
乗法公式
さて、「多項式\(\,\times\,\)多項式」の展開にはよく出現する形があり、それらは「乗法公式」として暗記しておかなければなりません。
乗法公式とは、次のものです。
- \(\left(x+a\right)\left(x+b\right)=x^{2}+\left(a+b\right)x+ab\)
- \(\left(x+a\right)^{2}=x^{2}+2ax+a^{2}\)
- \(\left(x-a\right)^{2}=x^{2}-2ax+a^{2}\)
- \(\left(x+a\right)\left(x-a\right)=x^{2}-a^{2}\)
- \(\left(ax+b\right)\left(cx+d\right)=acx^{2}+\left(ad+bc\right)x+bd\)
特に、公式2と公式3は平方公式と呼ばれます。
これらの公式は分配法則を用いて展開すれば、以下の通り簡単に導くことができます。
- \(\left(x+a\right)\left(x+b\right)\\
=x^{2}+bx+ax+ab\\
=x^{2}+\left(a+b\right)x+ab\)
- \(\left(x+a\right)^{2}\\
=\left(x+a\right)\left(x+a\right)\\
=x^{2}+ax+ax+ab\\
=x^{2}+2ax+a^{2}\)
- \(\left(x-a\right)^{2}\\
=\left(x-a\right)\left(x-a\right)\\
=x^{2}-ax-ax+ab\\
=x^{2}-2ax+a^{2}\)
- \(\left(x+a\right)\left(x-a\right)\\
=x^{2}+ax-ax-a^{2}\\
=x^{2}-a^{2}\)
- \(\left(ax+b\right)\left(cx+d\right)\\
=abx^{2}+adx+bcx+bd\\
=acx^{2}+\left(ad+bc\right)x+bd\)
はい、導けましたね。
しかし、公式を覚えていなければ、「因数分解」でつまずきます。
因数分解とは、いわば、展開の逆演算です。
つまり、公式の左辺を見て、右辺をひねり出してこなければなりません。
それを行うには、公式を確実に覚えておく必要があります。
練習問題
それでは、簡単な練習問題を解いておきましょう。
(問) 次の式を展開せよ。
(1) \(\left(x+2\right)\left(x+3\right)\)
(2) \(\left(x+4\right)^{2}\)
(3) \(\left(x-5\right)^{2}\)
(4) \(\left(x+6\right)\left(x-6\right)\)
(5) \(\left(2x+3\right)\left(4x-5\right)\)
(1) \(\left(\color{red}{x}+\color{blue}{2}\right)\left(\color{red}{x}+\color{blue}{3}\right)\)
これは、公式1の形です。
(脳内で行う思考)
\(\,\color{red}{x}\,\)を\(\,2\,\)乗する → \(\,\color{blue}{2}\,\)と\(\,\color{blue}{3}\,\)を足して\(\,\color{red}{x}\,\)を掛ける → \(\,\color{blue}{2}\,\)と\(\,\color{blue}{3}\,\)を掛ける
よって...
\(\left(x+2\right)\left(x+3\right)=x^{2}+5x+6\)
(2) \(\left(\color{red}{x}+\color{blue}{4}\right)^{2}\)
これは、公式2の形です。
(脳内で行う思考)
\(\,\color{red}{x}\,\)を\(\,2\,\)乗する → \(2\times\color{red}{x}\times\color{blue}{4}\) → \(\,\color{blue}{4}\,\)を\(\,2\,\)乗する
よって...
\(\left(x+4\right)^{2}=x^{2}+8x+16\)
(3) \(\left(\color{red}{x}\color{blue}{-5}\right)^{2}\)
これは、公式3の形です。
(脳内で行う思考)
\(\,\color{red}{x}\,\)を\(\,2\,\)乗する → \(2\times\color{red}{x}\times\left(\color{blue}{-5}\right)\) → \(\,\color{blue}{-5}\,\)を\(\,2\,\)乗する
よって...
\(\left(x-5\right)^{2}=x^{2}-10x+25\)
(4) \(\left(\color{red}{x}+\color{blue}{6}\right)\left(\color{red}{x}-\color{blue}{6}\right)\)
これは、公式4の形です。
(脳内で行う思考)
\(\,\color{red}{x}\,\)の\(\,2\,\)乗 \(-\) \(\,\color{blue}{6}\,\)の\(\,2\,\)乗
よって...
\(\left(x+6\right)\left(x-6\right)=x^{2}-36\)
(5) \(\left(\color{green}{2}\color{red}{x}+\color{blue}{3}\right)\left(\color{green}{4}\color{red}{x}\color{blue}{-5}\right)\)
これは、公式5の形です。
(脳内で行う思考)
\(\color{green}{2}\color{red}{x}\,\)と\(\,\color{green}{4}\color{red}{x}\,\)を掛ける → \(\,\color{green}{2}\times\left(\color{blue}{-5}\right)\,\)と\(\,\color{green}{4}\times\color{blue}{3}\,\)を足して\(\,\color{red}{x}\,\)を掛ける → \(\,\color{blue}{3}\,\)と\(\,\color{blue}{-5}\,\)を掛ける
よって...
\(\left(2x+3\right)\left(4x-5\right)=8x^{2}+2x-15\)
5問とも途中式を書かずに答えを出しました。
この程度の簡単な問題ならば、すべてを頭の中で処理できるようになることが理想です。
まとめ
分配法則を用いた展開
\(a\left(b+c\right)=ab+ac\)
\(\left(a+b\right)\left(c+d\right)=ac+ad+bc+bd\)
乗法公式
\(\left(x+a\right)\left(x+b\right)=x^{2}+\left(a+b\right)x+ab\)
\(\left(x+a\right)^{2}=x^{2}+2ax+a^{2}\)
\(\left(x-a\right)^{2}=x^{2}-2ax+a^{2}\)
\(\left(x+a\right)\left(x-a\right)=x^{2}-a^{2}\)
\(\left(ax+b\right)\left(cx+d\right)=acx^{2}+\left(ad+bc\right)x+bd\)
以上が展開の基本です。
確実に暗記して因数分解へ進んでください。