この記事では、対称式について書いています。
対称式は高校数学の様々な分野を横断して出現しますので、ここで基礎を確実に身につけてください。
対称式とは
対称式とは、文字を入れ替えても値が変わらない式のことです。
たとえば...
\(x+y\\
xy\)
このような式を指します。
当然ですが、これらの式は\(x\,\)と\(\,y\,\)を入れ替えても値が変わることはありません。
\(x+y=y+x\\
xy=yx\,\)
特に、この\(\,2\,\)つの対称式「\(\,x+y\,\)」と「\(\,xy\,\)」には基本対称式という名前がついています。
基本対称式以外の対称式で、主なものを挙げると...
\(x^{\,2}+y^{\,2}\\[0.5em]
x^{\,3}+y^{\,3}\\[0.5em]
\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{1}{y}\)
これらの式も\(\,x\,\)と\(\,y\,\)を入れ替えても値が変わらないことは確認できるはずです。
そして、対称式には、とても重要な性質があります。
それは...
つまり、\(\,x^{\,2}+y^{\,2}\,\)などの基本対称式以外の対称式は、基本対称式\(\,x+y\,\)と\(\,xy\,\)を用いて表すことができるということです。
基本対称式以外の対称式を基本対称式で表す
上の例に挙げた\(\,3\,\)つの対称式を基本対称式で表すと...
x^{\,3}+y^{\,3}&=&\left(x+y\right)^{3}-3xy\left(x+y\right)\\[0.5em]
\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{1}{y}&=&\displaystyle\frac{x+y}{xy}\end{eqnarray}\)
見ての通り、いずれの式も\(\,x+y\,\)と\(\,xy\,\)で表せていますよね。
この\(\,3\,\)つの式はよく出題されますので、公式のように暗記しておいた方がいいです。
ここで、それぞれの式を\(\,1\,\)つずつ確認していきます。
\(x^{\,2}+y^{\,2}\,\)
- \(\left(x+y\right)^2\,\)を展開する
\(\left(x+y\right)^2=x^{\,2}+2xy+y^{\,2}\)
- \(2xy\,\)を移項して\(\,x^{\,2}+y^{\,2}\,\)をつまみ出す
\(x^{\,2}+y^{\,2}=\left(x+y\right)^2-2xy\)
\(x^{\,3}+y^{\,3}\,\)
- \(\left(x+y\right)^3\,\)を展開する
\(\left(x+y\right)^3=x^{\,3}+3x^{\,2}y+3xy^{2}+y^{\,3}\)
- \(3x^{\,2}y+3xy^{2}\,\)を移項して\(\,x^{\,3}+y^{\,3}\,\)をつまみ出す
\(x^{\,3}+y^{\,3}=\left(x+y\right)^2-3x^{\,2}y-3xy^{2}\)
- \(-3x^{\,2}y-3xy^{2}\,\)の部分を\(\,-3xy\,\)でくくる
\(x^{\,3}+y^{\,3}=\left(x+y\right)^{3}-3xy\left(x+y\right)\)
なお、\(3\,\)乗の展開が不安な人は、こちらの記事もチェックしてみてください。
\(\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{1}{y}\,\)
- 通分する
\(\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{1}{y}&=&\displaystyle\frac{y}{xy}+\displaystyle\frac{x}{xy}=\displaystyle\frac{x+y}{xy}\end{eqnarray}\)
以上の式変形を何度も繰り返しているうちに、自然に暗記しているという状態が理想です。
暗記をしていれば、対称式の問題は楽勝で解けます。
練習問題
それでは、簡単な練習問題を解いていきます。
(問) \(x+y=4,~xy=5\,\)のとき、次の値を求めよ。
(1) \(x^{\,2}+y^{\,2}\)
(2) \(x^{\,3}+y^{\,3}\)
(3) \(\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{1}{y}\)
(1)について
\(x^{\,2}+y^{\,2}=\left(x+y\right)^2-2xy\)
でしたね。
\(x+y=4,~xy=5\,\)を代入して...
\(\begin{eqnarray}x^{\,2}+y^{\,2}&=&\left(x+y\right)^2-2xy\\
&=&4^{\,2}-2\cdot5\\
&=&16-10=6\end{eqnarray}\)
(2)について
\(x^{\,3}+y^{\,3}=\left(x+y\right)^{3}-3xy\left(x+y\right)\)
でしたね。
\(x+y=4,~xy=5\,\)を代入して...
\(\begin{eqnarray}x^{\,3}+y^{\,3}&=&\left(x+y\right)^{3}-3xy\left(x+y\right)\\
&=&4^{\,3}-3\cdot5\cdot4\\
&=&64-60=4\end{eqnarray}\)
(3)について
\(\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{1}{y}=\displaystyle\frac{x+y}{xy}\)
でしたね。
\(x+y=4,~xy=5\,\)を代入して...
\(\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{1}{y}&=&\displaystyle\frac{x+y}{xy}\\
&=&\displaystyle\frac{4}{5}\end{eqnarray}\)
はい、できました。
まとめ
対称式とは、文字を入れ替えても値が変わらない式。
\(\,x+y\,\)と\(\,xy\,\)を基本対称式という。
すべての対称式は基本対称式で表すことができる。
\(\begin{eqnarray}x^{\,2}+y^{\,2}&=&\left(x+y\right)^{2}-2xy\\[0.5em]
x^{\,3}+y^{\,3}&=&\left(x+y\right)^{3}-3xy\left(x+y\right)\\[0.5em]
\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{1}{y}&=&\displaystyle\frac{x+y}{xy}\end{eqnarray}\)
以上が対称式の基礎事項です。