この記事では、絶対値を含む不等式について書いています。
基本問題を通して解き方を丁寧に解説していますので、最後まで読んでもらえると嬉しいです。
|x|<2
|x|>2 の解き方
では、最も基本的な問題からスタートします。
(問)1 次の不等式を解け。
(1) \(|\,x\,|<2\)
(2) \(|\,x\,|>2\)
場合分けありで解く
まずは、絶対値記号の外し方に忠実に従って問題を解いてみます。
絶対値記号の外し方とは...
- 絶対値記号の中身が正(\(\,\color{blue}{0}\,\)以上)のときはそのまま外す
- 絶対値記号の中身が負のときはマイナスをつけて外す
でしたね。
というわけで、絶対値記号の中身の正負で場合分けを行います。
\(\rm(\,i\,)\) \(x≧0\,\)のとき (絶対値記号の中身が\(\,0\,\)以上)
絶対値記号はそのまま外して...
\(\begin{eqnarray}|\,x\,|&<&2\\
x&<&2\end{eqnarray}\)
これを\(\,x≧0\,\)という条件と合わせて...
\(0≦x<2\)
\(\rm(\,ii\,)\) \(x<0\,\)のとき (絶対値記号の中身が負)
絶対値記号はマイナスをつけて外して...
\(\begin{eqnarray}|\,x\,|&<&2\\
-x&<&2\\
x&>&-2\end{eqnarray}\)
これを\(\,x<0\,\)という条件と合わせて...
\(-2<x<0\)
\(\rm(\,i\,),\ (\,ii\,)\,\)を合わせて...
\(-2<x<2\)
これで、(1)は解けました。
\(\rm(\,i\,)\) \(x≧0\,\)のとき (絶対値記号の中身が\(\,0\,\)以上)
絶対値記号はそのまま外して...
\(\begin{eqnarray}|\,x\,|&>&2\\
x&>&2\end{eqnarray}\)
これを\(\,x≧0\,\)という条件と合わせて...
\(x>2\)
\(\rm(\,ii\,)\) \(x<0\,\)のとき (絶対値記号の中身が負)
絶対値記号はマイナスをつけて外して...
\(\begin{eqnarray}|\,x\,|&>&2\\
-x&>&2\\
x&<&-2\end{eqnarray}\)
これを\(\,x<0\,\)という条件と合わせて...
\(x<-2\)
\(\rm(\,i\,),~(\,ii\,)\,\)を合わせて...
\(x<-2,~2<x\)
これで、(2)も解けました。
なお、絶対値記号の外し方がまだ不安な人はこちらの記事もチェックされることをおすすめします。
場合分けなしで解く
ところで、絶対値を含む不等式にも、場合分けなしで解く方法が存在します。
といっても、以下のようなことはしてはダメです。
\(\begin{eqnarray}|\,x\,|&<&2\\
x&<&\pm2\ \cdots ×\end{eqnarray}\)
左辺の絶対値記号を外す代わりに右辺に\(\,\pm\,\)をつける、これは方程式の解き方であり、不等式の解き方ではありません。
これを混同してしまう人がよく見受けられますが、その原因は式変形の意味を理解できていないことにあります。
以下では、問題の意味を掘り下げて、(問)1の(1)と(2)をもう一度解いてみます。
なお、絶対値を含む方程式の解き方が気になる人はこちらの記事もチェックしてみてください。
\(|\,x\,|<2\,\)という式を言語化すると...
\(x\,\)の絶対値は\(\,2\,\)より小さい
つまり、この不等式は絶対値が\(\,2\,\)より小さい\(\,x\,\)の値の範囲を求めたい、ということです。
それを満たす\(\,x\,\)とは、\(-2\,\)より大きく\(\,2\,\)より小さい数。
よって...
\(~~~~|\,x\,|<2\\
-2<x<2\)
はい、解けました。
\(|\,x\,|>2\,\)という式を言語化すると...
\(x\,\)の絶対値は\(\,2\,\)より大きい
つまり、この不等式は絶対値が\(\,2\,\)より大きい\(\,x\,\)の値の範囲を求めたい、ということです。
それを満たす\(\,x\,\)とは、\(-2\,\)より小さい数、または、\(2\,\)より大きい数。
よって...
\(~~~~~|\,x\,|>2\\
x<-2,\ 2<x\)
はい、解けました。
そして、これらのことを一般的に言うと絶対値を含む不等式の解き方を示すことができます。
絶対値を含む不等式の解き方
\(\alpha>0\,\)のとき
\(|\,x\,|<\alpha\,\Longleftrightarrow\,-\alpha<x<\alpha\)
\(|\,x\,|>\alpha\,\Longleftrightarrow\,x<-\alpha,~x<\alpha\)
この解き方は公式のように暗記するよりも意味を理解しておくことが大切です。
|x+1|<2
|x+1|>2 の解き方
ここで、絶対値記号の中身を少しだけイジった問題も解いてみます。
(問)2 次の不等式を解け。
(1) \(|\,x+1\,|<2\)
(2) \(|\,x+1\,|>2\)
このような形であっても、やり方はまったく同じです。
不等号の口が左(絶対値の側)に向いているので、「はさむ」やり方で不等式は解けます。
\(~~|\,x+1\,|<2\\
-2<x+1<2\)
この操作が納得できなければ、絶対値記号の中身\(\,x+1\,\)を\(\,X\,\)とでも置き換えてみてください。
\(\begin{eqnarray}|\,x+1\,|&<&2\\
|\,X\,|&<&2\end{eqnarray}\\
~~-2<X<2\\
-2<x+1<2\)
あとは、\(\,+1\,\)をそれぞれに移項すれば終了です。
\(~~-2<x\,\underline{+\,1}<2\\
-2\,\underline{-\,1}<x<2\,\underline{-\,1}\\
~~~~~~-3<x<1\)
不等号の口が右(絶対値の反対側)に向いているので、「分ける」やり方で不等式は解けます。
\(~~~~~~|\,x+1\,|>2\\
x+1<-2,~2<x+1\)
これも、絶対値記号の中身\(\,x+1\,\)を\(\,X\,\)と置き換えれば納得できるはずです。
\(~~~~\begin{eqnarray}|\,x+1\,|&>&2\\
|\,X\,|&>&2\end{eqnarray}\\
~~~~~~X<-2,~2<X\\
x+1<-2,~2<x+1\)
あとは、\(\,+1\,\)をそれぞれに移項すれば終了です。
\(x\,\underline{+\,1}<-2,~2<x\,\underline{+\,1}\\
x<-2\,\underline{-\,1},~2\,\underline{-\,1}<x\\
~~~~~~~x<-3,~1<x\)
まとめ
絶対値記号は絶対値記号の中身の正負で場合分けをして外す。
しかし、絶対値を含む不等式では、以下の操作を行えば場合分けは不要。
\(\alpha>0\,\)のとき
\(|\,x\,|<\alpha\,\Longleftrightarrow\,-\alpha<x<\alpha\)
\(|\,x\,|>\alpha\,\Longleftrightarrow\,x<-\alpha,~x<\alpha\)
これが絶対値を含む不等式の解き方です。
くれぐれも方程式の解き方と混同しないように気をつけてください。