この記事では、2重根号の外し方について書いています。
\(2\,\)重根号とは、ルートの中にルートが含まれる形のことです。
たとえば...
\(\sqrt{1+\sqrt{2}}\)
このような形のことを言います。
以下では、\(\,2\,\)重根号の処理の仕方について丁寧に解説していますので、皆様の参考になれば幸いです。
2重根号の外し方
そもそも、\(2\,\)重根号は必ずしも外せるとは限りません。
\(2\,\)重根号を外せるのは根号の中身が以下の形になっている場合です。
\(x>0,~y>0\,\)のとき
\(\sqrt{\left(x+y\right)+2\sqrt{xy}}\\
=\sqrt{x}+\sqrt{y}\)
これは参考書などで書かれている\(\,2\,\)重根号の外し方そのものです。
では、この式の意味を考えてみましょう。
\(\sqrt{\left(\color{red}{x+y}\right)+2\sqrt{\color{blue}{xy}}}\\
=\sqrt{x}+\sqrt{y}\)
赤の部分は\(\,x\,\)と\(\,y\,\)の和、青の部分は\(\,x\,\)と\(\,y\,\)の積ですね。
つまり、「足して赤、掛けて青」となる数の組み合わせを見つければ、\(2\,\)重根号は外れるということになります。
ところで...
足して○○、掛けて○○
この言葉をどこかで聞いたことはありませんか?
そう、まさしく因数分解です。
\(2\,\)重根号を外すという操作は「因数分解」と同じ要領で行います。
その理由は\(\,2\,\)重根号の外し方の式を逆から辿れば納得できるはずです。
\(\sqrt{x}+\sqrt{y}\)
まず、この式を\(\,2\,\)乗してルートをかぶせます(この操作を行っても値が変わることはありませんよね)。
そして、ルートの中身を展開すれば、\(2\,\)重根号が外れる前の形に戻ります。
\(\sqrt{x}+\sqrt{y}\\
=\sqrt{\left(\sqrt{x}+\sqrt{y}\right)^2}\\
=\sqrt{x+2\sqrt{xy}+y}\\
=\sqrt{\left(x+y\right)+2\sqrt{xy}}\)
展開をすれば\(\,2\,\)重根号が外れる前に戻るのということは、展開の逆操作である因数分解をすれば\(\,2\,\)重根号が外れるということに他なりません。
このように考えれば、ルートの中のルートの前になぜ\(\,2\,\)が必要なのかも理解してもらえるはずです。
基本問題
それでは、実際に問題を解いていきましょう。
(問)1 次の式を簡単にせよ。
(1) \(\sqrt{3+2\sqrt{2}}\)
(2) \(\sqrt{5-2\sqrt{6}}\)
問題文における「式を簡単にせよ」という要求は「\(\,2\,\)重根号を外せ」と言われていると考えて問題ありません。
というわけで、上で示した外し方に従って\(\,2\,\)重根号を外していきます。
(1) \(\sqrt{\color{red}{3}+2\sqrt{\color{blue}{2}}}\)
足して\(\,\color{red}{3}\,\)、掛けて\(\,\color{blue}{2}\,\)となる数の組み合わせを考えます。
因数分解と同じ要領で、掛けて\(\,2\,\)の方から絞り込みをかけると、\(2\,\)と\(\,1\,\)であるとすぐにわかるはずです。
よって...
\(\sqrt{3+2\sqrt{2}}\\
=\sqrt{2}+\sqrt{1}\\
=\sqrt{2}+1\)
\(1+\sqrt{2}\,\)と答えても、もちろん正解です。
(2) \(\sqrt{\color{red}{5}-2\sqrt{\color{blue}{6}}}\)
(1)と同様に、足して\(\,\color{red}{5}\,\)、掛けて\(\,\color{blue}{6}\,\)となる数の組み合わせを考えます。
それは\(\,3\,\)と\(\,2\,\)ですね。
ただし、この問題では、\(2\,\)重根号を外す前の\(\,5\,\)と\(\,2\sqrt{6}\,\)がマイナスで結ばれているので、外した後の\(\,\sqrt{3}\,\)と\(\,\sqrt{2}\,\)もマイナスで結びます。
よって...
\(\sqrt{5-2\sqrt{6}}\\
=\sqrt{3}-\sqrt{2}\)
これで正解ですが、\(1\,\)点だけ注意が必要です。
以下のように\(\,\sqrt{3}\,\)と\(\,\sqrt{2}\,\)の位置を入れ替えてしまうと、バツを食らいます。
\(\sqrt{5-2\sqrt{6}}\\
=\sqrt{2}-\sqrt{3}~\cdots×\)
そもそも、平方根の基礎事項として、ルートがつく数は必ず正の数になるのでした。
ならば、\(\sqrt{5-2\sqrt{6}}\,\)も正の数でなければなりません。
\(\sqrt{3}\,\)は当然\(\,\sqrt{2}\,\)より大きいので、\(\sqrt{3}-\sqrt{2}\,\)は正の数になりますが、\(\sqrt{2}-\sqrt{3}\,\)は負の数になってしまいます。
よって、この問題の答えとして採用できるのは\(\,\sqrt{3}-\sqrt{2}\,\)のみです。
この話をまとめておくと...
\(x>y>0\,\)のとき
\(\sqrt{\left(x+y\right)-2\sqrt{xy}}\\
=\sqrt{x}-\sqrt{y}\)
\(2\,\)重根号を外す際は、プラスであろうがマイナスであろうが、大きい数を左側に配置するのがおすすめです。
応用問題
最後に、少しひねった問題を解いてみます。
(問)2 次の式を簡単にせよ。
(3) \(\sqrt{7+4\sqrt{3}}\)
(4) \(\sqrt{3-\sqrt{5}}\)
(3) \(\sqrt{{7}+4\sqrt{3}}\)
基本問題と同様に、足して\(\,7\,\)、掛けて\(\,3\,\)になる数の組み合わせを見つければよいのかというと、それは違います。
そもそも、そんな数の組み合わせは存在しません。
この問題では、ルートの中のルートの前が\(\,2\,\)ではなく\(\,4\,\)になっているので、このままの状態で\(\,2\,\)重根号を外すことは不可能です。
そこで、ルートの中のルートの前が\(\,2\,\)になるように調節します。
\(4\sqrt{3}=2\sqrt{2^{\,2}\times 3}=2\sqrt{12}\)
ルートの前の\(\,4\,\)から\(\,2\,\)を\(\,1\,\)個ルートの中へしまい込んだというイメージです。
この変形を行えば、もう\(\,2\,\)重根号は外せます。
\(\sqrt{{7}+4\sqrt{3}}\\
=\sqrt{\color{red}{7}+2\sqrt{\color{blue}{12}}}\)
足して\(\,\color{red}{7}\,\)、掛けて\(\,\color{blue}{12}\,\)となる数の組み合わせを考えます。
それは\(\,4\,\)と\(\,3\,\)ですね。
よって...
\(\sqrt{7+4\sqrt{3}}\\
=\sqrt{7+2\sqrt{12}}\\
=\sqrt{4}+\sqrt{3}\\
=2+\sqrt{3}\)
はい、できました。
(4) \(\sqrt{3-\sqrt{5}}\)
この問題もルートの中のルートの前に\(\,2\,\)がないので、\(2\,\)重根号を外す前にひと手間が必要になります。
しかし、(1)のようにルートの前の数をルートの中にしまい込むようなことはできません。
このような場合は分母に\(\,2\,\)を置いて分子全体を\(\,2\,\)倍して無理やり\(\,2\,\)を作り出します。
\(\sqrt{3-\sqrt{5}}\\
=\sqrt{\displaystyle\frac{6-2\sqrt{5}}{2}}\\
=\displaystyle\frac{\sqrt{\color{red}{6}-2\sqrt{\color{blue}{5}}}}{\sqrt{2}}\)
これで、分子の\(\,2\,\)重根号が外せる形となりました。
足して\(\,\color{red}{6}\,\)、掛けて\(\,\color{blue}{5}\,\)となる数の組み合わせを考えます。
それは\(\,5\,\)と\(\,1\,\)ですね。
よって...
\(\sqrt{3-\sqrt{5}}\\
=\displaystyle\frac{\sqrt{6-2\sqrt{5}}}{\sqrt{2}}\\
=\displaystyle\frac{\sqrt{5}-\sqrt{1}}{\sqrt{2}}\\
=\displaystyle\frac{\sqrt{10}-\sqrt{2}}{2}\)
最後の変形は分母の有理化を行っているだけです。
なお、この問題も\(\,\displaystyle\frac{\sqrt{2}-\sqrt{10}}{2}\,\)と答えると間違いになるので、気をつけてください。
まとめ
\(x>0,~y>0\,\)のとき
\(\sqrt{\left(x+y\right)+2\sqrt{xy}}\\
=\sqrt{x}+\sqrt{y}\)
\(x>y>0\,\)のとき
\(\sqrt{\left(x+y\right)-2\sqrt{xy}}\\
=\sqrt{x}-\sqrt{y}\)
以上が\(\,2\,\)重根号の外し方です。
忘れやすい事項でもありますので、正しく記憶しておいてください。