この記事では、繁分数の処理方法について書いています。
はじめに
そもそも、繁分数とは、分数の中に分数を含む形のことを言います。
たとえば...
\(\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{2}}{\displaystyle\frac{3}{4}}\)
このような形です。
これは「\(4\) 分の \(3\) 分の \(2\) 分の \(1\)」と読めば良いでしょう。
繁分数は高校数学の様々な問題の途中式で出現し、担当者も塾生の皆様から計算方法について質問を受けることがよくあります。
以下にて、その処理の仕方について丁寧に説明していきます。
処理の仕方
まず、分数の中の分数は必ず解消できるということを知っておいてください。
その上で、処理の仕方を2通り見ていきます。
「割り算に書き換える方法」と「分子分母に同じ数を掛ける方法」です。
どちらの方法で処理をしても構いませんが、個人的には後者の方がおすすめです。
割り算に書き換える方法
分数が割り算に書き換えられるということは、小中学生のときに学習しました。
たとえば...
\(\displaystyle\frac{\color{red}{1}}{\color{blue}{2}}=\color{red}{1}\div\color{blue}{2}\)
このように書き換えることができます。
つまり、「\(\displaystyle\frac{\color{red}{\bf 分子}}{\color{blue}{\bf 分母}}=\color{red}{\bf 分子}\div\color{blue}{\bf 分母}\)」ということです。
ここで、\(\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{2}}{\displaystyle\frac{3}{4}}\) について
\(\color{red}{\displaystyle\frac{1}{2}}\) を分数全体の分子、\(\color{blue}{\displaystyle\frac{3}{4}}\) を分数全体の分母と考えると...
\(\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{\color{red}{\displaystyle\frac{1}{2}}}{\color{blue}{\displaystyle\frac{3}{4}}}&=&{\color{red}{\frac{1}{2}}}\div{\color{blue}{\frac{3}{4}}}\\
&=&\frac{1}{2}\times\frac{4}{3}=\frac{2}{3}\end{eqnarray}\)
分子分母に同じ数を掛ける方法
分数の分子と分母両方に同じ数を掛けても値は変わらないということも、小中学生のときに学習しました。
たとえば...
\(\displaystyle\frac{\color{red}{1}}{\color{blue}{2}}=\frac{\color{red}{1}\color{green}{\times2}}{\color{blue}{2}\color{green}{\times2}}=\frac{2}{4}\)
\(\displaystyle\frac{2}{4}\) は約分すれば \(\displaystyle\frac{1}{2}\) に戻ることが確認できると思いますので、両者の値は等しくなります。
上では \(2\) を掛けていますが、\(2\) 以外の数を掛けても値が変わることはもちろんありません。
ただし、分子と分母両方に掛けるということを必ず押さえておいてください。
片方ではなく、両方です。
ここで、\(\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{2}}{\displaystyle\frac{3}{4}}\) について
分数の中の分数を解消するためには、分子分母に何を掛ければよいか?
それは、分数全体の分子 \(\color{red}{\displaystyle\frac{1}{2}}\) の分母 \(\color{red}{2}\) と分数全体の分母 \(\color{blue}{\displaystyle\frac{3}{4}}\) の分母 \(\color{blue}{4}\) の最小公倍数、すなわち、\(\color{green}{4}\) です。
分子と分母に \(\color{green}{4}\) を掛けると...
\(\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{\color{red}{\displaystyle\frac{1}{2}}}{\color{blue}{\displaystyle\frac{3}{4}}}&=&\displaystyle\frac{\color{red}{\displaystyle\frac{1}{2}}\color{green}{\times4}}{\color{blue}{\displaystyle\frac{3}{4}}\color{green}{\times4}}\\[0.5em]
&=&\frac{2}{3}\end{eqnarray}\)
以上、「割り算に書き換える方法」と「分子分母に同じ数を掛ける方法」、どちらの処理を行っても...
\(\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{2}}{\displaystyle\frac{3}{4}}=\displaystyle\frac{2}{3}\)
となり、分数の中の分数が見事に解消されることが確認できました。
練習問題
では、練習問題を1つ解いてみます。
まず、この問題における「簡単にせよ」という要求は、「分数の中の分数を解消せよ」と言われていると考えてください。
つまり、上に示した2通りの方法のいずれかを行うことで、この問題は答えに辿り着くことができるということです。
割り算に書き換える方法で解く
\(\color{red}{1}\) を分数全体の分子、\(\color{blue}{{1+\displaystyle\frac{1}{x+1}}}\) を分数全体の分母と考えると...
\(\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{\color{red}{1}}{\color{blue}{1+\displaystyle\frac{1}{x+1}}}&=&\color{red}{1}\div\left(\color{blue}{1+\displaystyle\frac{1}{x+1}}\right)\\
&=&1\div\displaystyle\frac{x+1+1}{x+1}\\[0.5em]
&=&1\div\displaystyle\frac{x+2}{x+1}\\[0.5em]
&=&1\times\displaystyle\frac{x+1}{x+2}\\[0.5em]
&=&\displaystyle\frac{x+1}{x+2}\end{eqnarray}\)
分子分母に同じ数を掛ける方法で解く
分数の中の分数を解消するため、分子と分母に \(\color{green}{x+1}\) を掛けると...
\(\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{\color{red}{1}}{\color{blue}{1+\displaystyle\frac{1}{x+1}}}&=&\displaystyle\frac{\color{red}{1}\color{green}{\times(x+1)}}{\left(\color{blue}{1+\displaystyle\frac{1}{x+1}}\right)\color{green}{\times(x+1)}}\\[0.5em]
&=&\displaystyle\frac{x+1}{x+1+1}\\[0.5em]
&=&\displaystyle\frac{x+1}{x+2}\end{eqnarray}\)
当たり前の話ですが、どちらの方法を採用しても答えは同じになります。
まとめ
繁分数は「割り算に書き換える方法」か「分子分母に同じ数を掛ける方法」のいずれかで分数の中の分数を必ず解消することができます。
練習問題では随分と丁寧に途中式を書きましたが、この程度の問題ならば途中式ナシで解答できるレベルが目標です。